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仙台高等裁判所 昭和38年(う)491号 判決

主文

原判決中被告人等に関する部分を破棄する。

被告人紺野隆人を懲役五月に、被告人新田照夫を懲役四月に処する。

但し、被告人両名に対し本裁判確定の日から三年間右各刑の執行を猶予する。

被告人新田照英から金一万七千円を追徴する。

当審における訴訟費用は全部被告人両名の連帯負担とする。

理由

≪前略≫

職種をもつて調査するに、<中略>

公職選挙法二二一条三項にいう「公職の候補者」とは、同法の規定にもとづく正式の立候補届出または推薦届出により候補者としての地位を有するに至つた者をいい、未だ正式の届出をしない、いわゆる「立候補しようとする特定人」を包含しないものと解すべく(昭和三五年二月二三日最高裁判所第三小法廷判決参照)、また同項にいう「選挙運動を総括主宰した者」とは、右「公職の候補者」の場合との刑の権衡からして(候補者は右の立候補届出または推薦届出以後でないと同項による刑の加重を受けない。)候補者の正式の立候補届出または推薦届出以後において、当該選挙運動を実質的に総括主宰した者をいい、右の届出以前におけるものを含まないものと厳格に解するのを相当とする。しかるに原判決は、被告人紺野原判示第一の(一)、および被告人新田の原判示第二の(一)の各立候補届出前の饗応接待の所為に対し、いずれも公職選挙法二二一条三項を適用して処断していることが明らかである。したがつて公職選挙法二二一条三項にいう「公職の候補者」には「立候補をしようとする特定人」を、また「選挙運動を総括主宰した者」には、候補者の立候補の正式届出以前における総括主宰者をも含まれるものと解した原判決は法令の解釈適用を誤つた違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決中被告人紺野、同新田に関するこの部分はいずれも破棄を免れない。

≪後略≫

(裁判長判事斎藤寿郎 判事小嶋弥作 杉本正雄)

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